ひとりでもにんげん

旅好きなのにインドア派、一人でどれだけ遊べるか

【シベリア鉄道一人旅】イルクーツク駅での心細い一夜

2016年 8月14日(日)

午前1時。イルクーツク駅のホームに降りた。気温は低くはっきりと寒い。肌寒いってレベルじゃない。吐いた息が白くなるほどだ。ジャケットのジッパーを首元まで締め、背中をバックパックで温めて、駅舎へ向かって歩く。

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さてどうしようか。到着時刻を間違えた上に宿などを予約していない僕は、ひとまず駅周辺を散策することにした。鉄道内でベルギー人とロシア人の兄ちゃんに教えてもらったホテルがある。まずはそこを探そう。

 

駅を出ると、そこにはたくさんの人が集まっていた。タクシーの運転手だ。車のヘッドライトに照らされ、無数のタバコの煙が夜空に白く舞う。バックパッカーが一人現れたと見ると、彼らは一斉に群がってきた。

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【シベリア鉄道一人旅】久しぶりの会話と、しでかしたミス

2016年 8月13日(土)

ウラン・ウデ駅にて客室に一人残されてしまった、と思ったら入れ替わりに英語の話せる同居人ができた。言葉に飢えていたところにこれはありがたい。いや、僕だって英語がそんなに話せるわけじゃないけれど、ロシア語よりは何十倍もコミュニケーションが取れる。つまり、会話ができる。

 

「どこから来た」

「日本」

「日本! 日本人に会うのはこれが初めてだ」

 

彼らはベルギー人ロシア人の男二人組だった。語学留学先のドイツで知り合い、それからというものこうして時々二人で旅行しているんだそうだ。一ヶ月かけてロシア各所を巡り、これからモスクワへ向かうところだ、と、そう話してくれた。

しかし英語を話せるロシア人とはなんて貴重な存在なんだ。つまりは通訳だ。僕はまず今まで耳にして印象に残っていたロシア語がどういう意味だったのかを彼に聞いてみることにした。

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【シベリア鉄道一人旅】ウラジオストク - イルクーツク 三日目

2016年 8月13日(土)

旅立って一週間。この日は色々なことがあった。

 

 目が覚めたのは7時頃。いつもより早いのはなぜかというと、向かいのベッドのソーニャ親子が慌ただしく支度をしているからだった。上着を着て、カバンに荷物をまとめている。

7時半にもならないうちに列車が止まった。ソーニャ親子が降りていく。ダスヴィダーニャ! ロシア語で「さようなら」という意味だ。そう挨拶したはいいものの、どうやら長く停車をする駅のようで、僕も朝食を食べないうちに下車することにした。

 

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ここは「チタ」という駅らしい。湖の向こうに工業地帯の見える、比較的大きな街だ。僕にとっては馴染み深い地名で笑ってしまう。日本にもそんな名前の地域があるのだ。

朝とはいえ、ジャケットを羽織っていても肌寒いくらいの気温。それなのにパンツ一丁で煙草を一服しているロシア人を見かけた。そんなことをしているのは彼一人だったので、ロシア人にしても体温が高い方なのだろう。

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【シベリア鉄道一人旅】ウラジオストク - イルクーツク 二日目

2016年 8月12日(金)

8時に目が覚めるもベッドから起き上がる気になれず、9時頃までうとうとして過ごした。他の乗客が動き出したところで、僕もようやく行動を始めることにした。

 

「ズドラーストヴィチェ!」

「ドーブラエウートラ」

 

景気付けに挨拶をしたはいいがそうだった、「おはよう」はドーブラエウートラなのだった。ズドラーストヴィチェは「こんにちは」だ。よし、また一つロシア語を覚えたぞ。

 

朝食は例の巨大ビスケット3枚と、紅茶2杯。二日もすればこの生活にも慣れて、おばさんの譲ってくれるベッドの上でも落ち着いて過ごせるようになった。車窓からの景色だって撮影できるほどだ。もちろん遠慮がちではあるけれど。

 

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それも、こんなつまらない写真だったりするのだけれど。どうしてここでカメラを取り出したのだろう? 大きな川を渡るのが珍しくて撮ったのだろうか? そんなことでも珍しがれるほど、平坦な風景が続くからなあ。

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【シベリア鉄道一人旅】ウラジオストク - イルクーツク 一日目

2016年 8月11日(木)

朝9時に目が覚めた。同室の人々は既に起きているようだ。二段ベッドから降り、用を足しに車両前方に備え付けられたトイレへ行く。洗面所の蛇口から出る水は勢いが弱く、顔を洗うには適さなさそうだ。持ってきた汗拭きシートで顔を拭き、身支度を済ませた。眠気覚ましに熱い紅茶を淹れて飲む。朝食にしよう。

 

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ベッドによじ登って朝食を広げようとすると、下のベッドに寝転がっているお母さんに何やらロシア語で注意されてしまった。そんなところでものを食べるな、はしたないから、と言っているようだ。そして、窓際に備え付けられた小さなテーブルを指差し、そこを使うよう促した。下のベッドのシーツを手でならし、僕の席まで作ってくれる。

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