【ロシア一人旅】ウラジオストクを散歩する
2016年 8月8日(月)
自由に動ける用意が整ったので日没まで街をうろうろしてみることにした。想像していたよりも暑いけれど、空気が乾燥しているおかげで汗をかいてもすぐ乾き歩きやすい。まずはどこへ行こう。通りに沿って歩いて、港の様子でも見に行こうか。
それにしても不思議なところだ。街並みは西洋風なのに、走っている車はほとんどが日本車なのだ。右側通行だからか路線バスは例外的に皆左ハンドルだが、一般的な乗用車は右ハンドルそのままの日本車。それも一目で中古とわかるものが走っている。西濃運輸のトラックが外見を変えないまま走っていたり、松本市消防団の赤い消防車が回転灯を外して走っていたりと、ついクスリと笑ってしまう。
そして何より坂道が多い。港町とはどこもこうなのだろうか。海から遠ざかる道はほとんどが上り坂だ。そのためかはわからないが車は常に渋滞している。ただ単に交通量が多く、そのくせ路上駐車で路肩が埋まっているからかもしれないが。
歩いて行くと、道の真ん中にロシアらしい展示物がいきなり現れた。潜水艦だ。おそらく実際に使われていたものだろう。しかし案内板が全てロシア語表記で詳細が全くわからない。その背後には古びた金属板に名前のようなものが刻印された壁が立っている。その雰囲気からしておそらくは戦没者慰霊碑だろうか。「1945」と終戦の年がかたどられたモニュメントもある。
潜水艦の中に入ることもできるようだ。でも今日はもう少し街を散策してみよう。この距離なら明日にでも来ることができる。
再び駅のある街の中心部へ向かって歩くと、フェリー内で出会ったTさんに再び出くわした。お互いバックパックを持たずに軽装だ。「西の方に行くとビーチがありましたよ」とTさんは教えてくれた。ビーチか。にぎやかそうでいいな。僕の方も、道を真っ直ぐ行けば潜水艦が展示されていたという発見をTさんに伝え、再度別れた。ここはそれほど大きな街ではない。徒歩で観光していたら、また会えるかもしれない。
有益な情報通り道を西へしばらく歩くと、確かに砂浜があった。おもちゃやジュース、アイスクリームなどを売る屋台が連なり、子供連れも多い。かわいい観覧車つきの小さな遊園地まである。水着で歩く人も見られるが、不思議と海を泳いでいる人は少ない。ここにいる人たちは大抵、砂浜に寝そべってくつろいでいるか、ただ水着で散歩しているか、釣りをしているかだ。19時近い時間帯のせいかもしれないが、そんな時間でもまだまだ太陽は沈みそうにないのだ。
日差しの強い中をかなり歩いて喉が渇いた。屋台のお世話になることにしたが案外面白そうな飲み物がない。結局、500mlペットボトル入りのコカコーラを一本買った。お値段80ルーブル。およそ160円。なるほど、この調子ならコーラの価格は世界じゅうでも変わらなさそうだな。
コーラを飲みつつ浜辺を歩いて行くと、独特な曲に合わせて踊りながら練り歩いている列に遭遇した。先頭の男性が中東風の音楽に合わせて歌い、その後ろを何人もの女性がひらひらとした衣装を着て踊り歩いている。これは何だろう。
疲れて地面に座り込み、猫と戯れていたら時間を食ってしまった。今日の散歩はこれくらいにしよう。気づけば20時、すっかり夜と言っていい時間。しかし空の色はまだ夕焼けも始まっていないほど明るく、夕飯にする気分にもならない。
再び駅のある方へ向かって歩くことにした。駅からビーチまでは歩いて20分くらいの距離だ。それだけ動けばお腹も空くだろう。
駅まで戻るとちょうど夕焼けが綺麗に街を照らす頃になっていた。こうして街並みを眺めると、ウラジオストクはまだ発展の途中にある場所に見えた。もしくは古びたものを修復している時期なのかもしれない。大型のクレーンが目立つし、今日散歩した領域だけでも、建設用の足場に覆われた建物が多く見えた。
明日は山の上のクレーンが見えるあたりまで登ってみようか。あそこなら眺めが良さそうだ。そう予定を決めて、今日の締めくくりに夕飯を探す。
ところが僕はご飯屋さんを探すのが苦手だった。あまり高級なレストランに入るのは気がひけるし、安すぎるのも不安になる。日本でも何を食べるか一人で決めるのは苦手なのだ。
そういう時に助かるのがファストフードだ。駅の周りをうろうろしていると、何やら美味しそうな匂いが漂ってきた。寄ってみると、そこはハンバーガーの屋台だった。鉄板で直接肉を焼き、雑に野菜を挟み、客に渡している。かなりの行列ができているからきっと美味いんだろう。それに値段もでっかく表示されている。大事なことだ。
ということでスタンダードなハンバーガーとポテトのセットを夕飯にした。焼きたてで美味い。これが120ルーブルというから驚きだ。
物価の安さに驚くのはまだ早かった。帰り道、水を買いにスーパーマーケットへ寄ったのだが、1.5リットルサイズのミネラルウォーターとおやつのアイスクリームを買って合計は45ルーブル、100円もしない程度だったのだ。飲料水はここでは生活必需品だから安いのも納得だが、このアイスクリームの安さは何なのだろう。街角やビーチの屋台でも、アイスクリームは異様に安いのだ。これなら毎日でもデザートに食べられそうだ。