ひとりでもにんげん

旅好きなのにインドア派、一人でどれだけ遊べるか

【シベリア鉄道一人旅】ウラジオストク - イルクーツク 二日目

2016年 8月12日(金)

8時に目が覚めるもベッドから起き上がる気になれず、9時頃までうとうとして過ごした。他の乗客が動き出したところで、僕もようやく行動を始めることにした。

 

「ズドラーストヴィチェ!」

「ドーブラエウートラ」

 

景気付けに挨拶をしたはいいがそうだった、「おはよう」はドーブラエウートラなのだった。ズドラーストヴィチェは「こんにちは」だ。よし、また一つロシア語を覚えたぞ。

 

朝食は例の巨大ビスケット3枚と、紅茶2杯。二日もすればこの生活にも慣れて、おばさんの譲ってくれるベッドの上でも落ち着いて過ごせるようになった。車窓からの景色だって撮影できるほどだ。もちろん遠慮がちではあるけれど。

 

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それも、こんなつまらない写真だったりするのだけれど。どうしてここでカメラを取り出したのだろう? 大きな川を渡るのが珍しくて撮ったのだろうか? そんなことでも珍しがれるほど、平坦な風景が続くからなあ。

 

今日は朝から悲しい出来事があった。ウラジオストクで迷い込んだあの市場、あそこで買った1kgものプラムをどうやら腐らせてしまったらしいのだ。皮の表面が薄く湿っている。まだ一つしか食べていない。ビニール袋に入れたまま、通気性の悪い場所に置いていたのがマズかったらしい。どうしようか散々迷ったあげく、車両前方に備えられているゴミ箱に捨てることにした。市場の兄ちゃん、ごめん。せっかく値段まけてくれたのに。

 

貴重なビタミン源を失って受けたショックを読書で和らげていると、列車は駅に停車した。乗客がぞろぞろと外へ出ていく。また長めの小休止ができるらしい。

 

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降りた先はホームでもなんでもなくこんな列車と列車の隙間だった。実にロシアらしい。駅舎はどこにあるのか、徒歩で線路を渡って探してみると、車両何台分も離れた場所にあった。

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エロフェイ・パブロヴィチ駅。そう読むらしい。やはり英語表記があると安心だ。

 

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それにしてもこの……駅舎の独特のデザインは何をイメージしたものなのだろう。船? 犬? よくわからない。シベリアの真ん中で船をかたどるというのもどうかと思うし、やはりこれは……犬?

 

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駅の片隅では地元の人らしきおばさんが、ピロシキ風のパンなどの料理や水を売っていた。時刻は13時。お昼どきである。僕は鍋の中に見つけたロールキャベツ風のものを買い、軽い昼食にした。40ルーブル。貴重な野菜と、味のある肉だ。野性味あふれる肉の味を、貪るように噛み締めたのを覚えている。今にして思えば貧乏根性を抑えてもう一つぐらい買ったって良かったのに。

 

列車に戻ると、なんと日本人の旅行者に出くわした。なんとなく仕草や風体などでわかるもので、どちらからともなく挨拶した。東京から来たというその女性はウラン・ウデという街までこの列車に乗るらしく、計画ではバルト三国を巡ったのち、かつてかのアウシュビッツのあった現ポーランドを訪れその後オランダへ向かうのだと言う。色々な旅路があるものだ。つまり、ビザの面倒なベラルーシを迂回したということなのだろう。

 

「ビザ取るの面倒でしたよねえ」

 

お決まりの話題だ。が、しかし、この女性は、

 

「えー、私は海外のエージェントに頼んだら楽だったよ。安かったし」

「いくらぐらいでした?」

「20ドルとかそれくらい」

 

それは安い。僕はロシアのビザ取得に8000円かけたからその四分の一だ。これは大きいぞ。

 

俺もそうすりゃよかったな、と受けたショックを読書で緩和していると、眠気に襲われた。遠慮なく眠れるのがシベリア鉄道のいいところだ。本能に任せて眠ってしまおう。

 

そして目が覚めた時にはもう17時である。少し寝すぎた。だがまだ空は昼間のように明るい。景色を見に廊下へ出て、なまった体を少し動かした。

 

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お、集落があるぞ。

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と思った次の瞬間にはこんな光景だ。シベリアに生える木はどれも気の毒なほど細く、長い。白樺が多いように見えるがあまり適当なことを書くのはやめておこう。見える山肌が草に覆われて緑色に見えるのも印象的だった。

 

そんなところで本日二度目の停車。時刻は18時。今日はタイムラインをまだ一度も超えていない。

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流れる川が美しい街だ。なんと言う場所なのだろう。ホームへ降りて、付近を散策する。

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運営しているのかどうかわからない旅行案内所に街らしき名前が記されていた。どうやら「マガジン」という街らしい。"ТУРИСТ"と書いてある文字はツーリストと読む。そのまま、旅行者という意味だ。

そのマガジンのキオスクで、貴重な果物を見つけた。バナナだ。今の僕に足りない栄養素だ。少し高かったが、迷わず購入した。120ルーブル。それと、屋台で売っていたアイスクリームを買い、おやつにする。ロシアはアイスには困らない。

 

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再び出発するとまたこんな光景である。草、木、草原、山。それにしても土地がある。

 

とまあ、大きな事件もなく一日が過ぎた。ウラジオストクで迷子になった時が懐かしい。

夕飯は皆やはり暗くなってから食べたいようで、部屋の住人たちは日の沈んだ21時になってから食事の準備をした。僕の夕飯はまたカップ麺だ。あまり空腹を感じないから、今夜はこれだけ。

 

そしてやはり22時には寝支度を済ませた。今夜はなんだか冷える。体を上着で覆い、その上から布団をかぶって眠った。