ひとりでもにんげん

旅好きなのにインドア派、一人でどれだけ遊べるか

【ロシア一人旅】ウラジオストク2日目

2016年 8月9日(火)

朝。貴重品の入ったポーチを握りしめたまま目覚めた。安宿のベッドは意外にもふかふかで寝心地良く、すっかり熟睡してしまった。窓のない部屋のため時間の感覚がわからない。枕の下に潜り込ませた腕時計を掘り出してみると、もう9時過ぎだった。

安宿、というよりホステルという形態の宿泊施設には大抵の場合、共有のキッチンスペースがつく。ここもそうだった。大きなキッチンには誰もが使える食器類も付属する。僕はバナナ二つとりんご一つを朝食にし、昨晩買っておいた炭酸水でとっとと流し込んだ。身支度をし、宿を出る。

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▲宿の目の前の通り。この街は路上駐車が本当に多い。

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▲ちなみにベッドはこんなでした。安宿は汚れをごまかすためか色つきのシーツをよく使う。

今日向かう場所は決まっていた。高台に、ウラジオストクを見渡せる展望台があるという。まずはそこだ 。Googleマップで何となくの場所を割り出し、何となくそちらへ向かってただひたすら歩く。

30分ほど歩いただろうか。素敵な公園を見つけたので中を散歩してみることにする。遊具が並ぶような公園ではない。木々の中に小道が走り、ところどころにベンチが置かれているような公園だ。朝の散歩をしている住人もちらほら見られる。僕はベンチの一つに腰掛け、一休みした。途端に鳩が数羽足元へ寄ってくる。あいにく何か餌になるようなものは持っていない。そもそもお腹を空かせているのは僕の方だ。

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▲見つけた公園。名前はわからない。日差しが強い日で、木陰で涼めるのはありがたかった。

さあいつまでも座っているわけにはいかない。展望台へ向かわなくちゃ。地図で確認しても確実に近づいてはいる。どの道を行けばいいかは判然としないけれど。

それにしてもこの街は横断歩道というものが少ない。ただでさえ勾配が多く道路の見通しが悪いのに、車はビュンビュン飛ばすし、そんなところを渡るのは至難の技だ。

轢かれそうになりながら道を渡り、見知らぬ階段を登り、とにかく上を目指すと、不意に人で賑わっている場所が見えた。間違いない、あれが展望台だ。まだ登らなくちゃならないのか。

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▲まあ道に横断歩道の無いこと無いこと。何度轢かれそうになったことか。

展望台へ至るにはまた大きな道を渡る必要がある。しかもこれは例の大きな橋へ続く幹線道路のようだ。ヒヤリとしながら駆け足で道路を渡る。徒歩で来るには無茶な場所だったのかもしれない。

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展望台の人だかりのほとんどは中国人観光客だ。観光バスでどっと来ては、どっと帰っていく。そしてまた新たな団体がどっと来る。賑やかな人たちだ。皆、流行りの自撮り棒を持っていて、好きにパシャパシャやっている。おかげで僕も好きなだけ写真を撮ることができた。いや、ロシアの街中でカメラを取り出すってなかなかに勇気のいることなのだ。

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ウラジオストクといえばこのアングルの風景。ここからの写真だったって訳だ。

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▲展望台あるある。謎の南京錠。どこもやることは同じね。

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▲艦隊も丸見え。

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▲港の東側も船でいっぱい。

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▲シンボルになるだけあってとても綺麗な橋だ。ちなみに大きな橋はこれの他にもう一つある。

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▲交通量も多い。あの橋の向こうに行けたりは……しないかなあ。

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▲メンテナンス中の軍艦だろうか。たまらん。

景色を堪能し終える頃には正午を過ぎていた。展望台の売店は平日のせいか閉まっている。降りよう。降りれば何か食べるものもあるだろう。

ただ来た道を戻るのもつまらない。と言うよりも足がくたくたで、同じ道をまた歩くのは辛い。そう思って麓へ伸びる道を探していると、いいものを見つけた。

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ケーブルカーだ。文明の利器だ。あるなら早く言ってよ。これなら街の方まで一発で降りられる。

料金が不安だったが事前に切符を買うスペースがどこにも見当たらない。車両の中で支払えばいいんだろうか。そわそわしながら待っていると、青い車体のかわいいケーブルカーが昇ってきた。乗客は僕を含め2人。

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運賃は車掌さんらしきおばさんが直接回収するというシステムだった。気になるお値段は片道で11ルーブルつまり20円しないくらい。ちゃんと採算取れてる? その1ルーブルは何?

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そうか、これなら横断歩道の無い道路を渡らなくても済んだのだ。しかも麓まで5分とかからない。ここで一つ学んだ。ロシアでは公共交通機関を積極的に使っていこう。この調子ならポケットに余った小銭でもまかなえる。

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▲ケーブルカーの駅舎(麓側)。「フニクレール」と読むのかな?

海にほど近い道まで降りてきた。これはいい。もう一度乗ってもいいくらいだったけれど、お腹が空いてしまっていた。ご飯を探そう。

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それにしても路上駐車の多い街だ、本当に。それに車も豪快に泥をかぶって汚れていたりする。フロントのバンパーが吹っ飛んで、ナンバープレートまで無くなった状態で走っているベンツを見かけたりもした。そういうところはおおらかと言うべきか……それでいいのかロシア。

道を真っ直ぐに行くと、見覚えのある道路にぶつかった。

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昨日も訪れた潜水艦の場所だ。なるほど、あの道はこう繋がるのか。ここまで来たならせっかくだし、今日は潜水艦に入ってみようか。

ここもやはりと言うか、中国人観光客でいっぱいだ。その列に並んで艦尾にある受付へ行くと、「どうぞ」とあっさり通されてしまった。……いや、僕は一人なんですけど。団体客じゃないんですけど。そんな顔をしても「さっさと進め」と受付のお姉さんに手で示される。こうして入場料が浮いた。本来なら100ルーブル

 

若干の罪悪感に苛まれながら展示物を見て回る。入り口からしばらくはロシア語表記の資料ばかりで何が何だかわからなかったけれど、船の前方部は中身がほとんどそのまま残されていた。

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▲とにかく弄れる場所を触りまくるのが子供の仕事。たまらないだろうね。

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よくわからないハンドルが回ったり計器が動いたりとなかなか面白い。そして狭い。人が多い。実際の運用時もこんな感じだったんだろうな……。これで海中を何週間も過ごすのか……。

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▲魚雷脇のベッド。僕の寝床はここよりマシだな。

潜水艦を見終えた。見る人が見ればもっと楽しめる場所だろうけど、いかんせん人の流れが速い。出てくるまであっという間だった。しかし空腹の僕にはちょうどいい速さだ。何か……何か食べなければ。

思考がずさんになった僕は、結局軍港脇のキオスクで買ったサーモンのサンドイッチと紅茶で腹を満たした。褐色のパンに、トマトとレタス、それにスモークサーモンが挟まれたボリューム満点のサンドイッチ。これが75ルーブル。もう3食ぜんぶこれでいいなと思えるほど美味しかった。カメラを取り出す間もなく平らげたので、画像は無し。

 

つづく。